今回は、読み切りマンガを描く人が躓きやすい「真ん中の中だるみ」を防ぐ方法を考えます。
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第2幕が上手く作れないあなたへ

新人賞用のマンガを描く際に、最初と最後は作れるけど、真ん中でどうすればいいのかわからない、という人は多いと思います。中盤での中だるみ回避に特化した本が出ているぐらいですからね。
今回は中盤での中だるみを防ぐ方法を考えます。

ここまでのおさらい

三幕構成、もしくは起承転結と呼ばれる物語構成の基本は下の図のようになります(この図を「パラダイム」と言います)。
型
詳しくはこれまでの記事をお読みいただきたいと思いますが、改めて簡単に説明します。

第1幕日常~事件発生までです。「主人公はこんな奴で、普段こんな日常を送ってますよ」と説明した後、何か事件が起こります。例えば、クラスに滅茶苦茶かわいい女の子が転校してきて、ひとめぼれしてしまう。これにより主人公はこれまでの日常と違う体験(冒険)に放り込まれます。

第2幕説明は後回しにして、第3幕は、最終決戦です。バトルならラスボスとの戦い、ラブコメなら告白とか仲直り、スポーツなら試合の後半戦開始、みたいなものです。決戦と言っても、戦いとは限りません。恋でもなんでも、解決しなければいけない問題を解決すればいいのです。

事件が起きるのがプロットポイント1。事件の解決に乗り出すのがプロットポイント2です。第2幕は、そのプロットポイント1と2の間です。

例えば、
プロットポイント1で滅茶苦茶かわいい女の子が転校してきて一目惚れする。
プロットポイント2で告白を決意する。
という流れにしたとします。
すると、一目惚れから告白までの間が第2幕です。

さて、第2幕では何をすればいいのでしょう? 大袈裟な話、「一目惚れ」と「告白」さえあれば話が成り立ってしまいます。真ん中で描くことがない…。困った…。

では、第2幕で何をすればいいのかお教えいたしましょう。

第2幕はサブキャラの章

第1幕で主人公がどういう奴か、どういう日常を過ごしている奴か、これからどんな問題に取り組まなければならないのかまでを描きました。第1幕は主人公の章です。

第2幕はサブキャラの章だと考えましょう。もちろん、例外はあります。主人公1人が出ずっぱりでサブキャラらしいサブキャラが全然登場しない漫画もありますが、そういう特殊例を除き、第2幕は基本的にサブキャラの章だと思いましょう。もちろん、サブキャラの章と言っても、主人公が空気になってはいけません。主人公がサブキャラのことを良く知るようになるのが第2幕です。

(注意:主人公とは別に読者視点キャラが設定してある場合、読者視点キャラを通じて主人公を描くのが第2幕になります)

例えば、第1幕のラストで主人公はヒロインに恋をしました。ならば、第2幕では、ヒロインについて描きましょう。

・ヒロインの家庭環境は?
・ヒロインに彼氏はいるの?
・ヒロインの恋愛観は?
・ヒロインの悩みは?
・ヒロインの秘密は?
・ヒロインの好きなことは?
・ヒロインの嫌いなことは?
・ヒロインの特技は?
・ヒロインの苦手なことは?

こういうことを、主人の視点を通じて描くのです。キャラクター設定によって、主人公はヒロインに積極的にアプローチしたり、こっそりストーキングしたり、様々な手法が考えられますが、第2幕は、「サブキャラはこんな奴なんですよ」と読者に伝えましょう。

実例『トリコ』『NARUTO』

例えば、読み切り版の『トリコ』を取り上げてみましょう。

最初はサブキャラ小松に興味がなかった主人公トリコですが、第2幕で小松の本当の願いが明らかになります。
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これにより、トリコは小松を理解し、小松とトリコの間に絆が生まれます。

次に、『NARUTO』第1話を見てみましょう。

第2幕でサブキャラであるイルカ先生の過去が語られ、ナルトとイルカ先生の絆が強まります。
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どちらのケースでも、サブキャラの気持ちを知った主人公はサブキャラへの理解を深め、主人公とサブキャラの間に絆が生まれたり絆が強化されたりします。

第1幕で、読者は主人公のことは、どんな奴かある程度分かりました。しかし、サブキャラがどんな奴化は、主人公も読者も知りません。主人公がサブキャラのことを知る過程を通じて、読者は主人公と一緒にサブキャラのことを知ります。これにより、読者は主人公と一体化し、なおかつサブキャラのことも理解を深めるという、一石二鳥の効果を得ます。

第2幕は前半と後半に分けよう

第2幕はサブキャラの章と言いましたが、ずっと「サブキャラはこんな奴ですよ」ばっかりやっていると読者は飽きてしまいます。そこで、第2幕は前半と後半に分けましょう。

先ほどの『NARUTO』なら、第2幕前半で禁術の練習をしているナルトのもとに、禁術書を狙う敵が登場します。ここから第2幕スタートです。
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『トリコ』なら、第2幕前半は目的地までの旅で、第2幕後半は目的地に着いた後、目的の動物を探す話です。
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「敵の登場」とか「目的地到着」とか、全体のほぼ中間地点で、物語が大きく動きます。この分けるポイントを「ミッドポイント」と言います。

『NARUTO』第1話なら、59ページ中、敵の登場は27ページ目。『トリコ』なら56ページ中、目的地到着は31ページ目です。多少のずれはありますが、物語のほぼ中間で話が大きく転換しています。

このように、ほぼ中間地点で第2幕を前半と後半に分けましょう。そして、後半では事件を大きく進めて、第3幕での事件解決に向けて弾みをつけましょう。

イメージとしては、

第1幕…準備運動(事件開始前)
第2幕前半…助走(サブキャラと交流)
第2幕後半…本気(事件が大きく進む)
第3幕…ラストスパート

です。

まとめ

長々と書いちゃいましたが、まとめると、

・第2幕(中盤)は、仲間やヒロインのことを描きましょう。

・第2幕を前半と後半に分けましょう。

・第2幕後半は、敵を登場させたり、目的地に着いたり、物語を大きく前に進めて、第3幕での最終決戦への準備をしましょう

ということです。「第2幕の中盤で話を前後半に分けるぞ」と意識すると、話作りの目安になるはずです。
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